日々の生活が何とか落ち着いてくると、狭いUSA柔道ワールド、「Megumi Ishikawaと言う柔道家がシカゴに居るらしい」との評判は広まり、いくつかの道場やUSA柔道連盟のキャンプからお呼びがかかるように・・・。
最初に講師で呼ばれたのが
「全米Women`s Camp(??)」。「なんだそれ?」と思いました?でもなめてはいけません。
1973年からずっと毎年開かれている「全米の女性柔道家(プロアマ混合)が4日間柔道漬けになる合宿」なのです。
そんな日本ではあり得ないイベントを含めて、何か所か回った結果「柔道」と「Judo」はかくも違う事を思い知らされました。
比較文化の観点からも面白いので、柔道関係者以外の皆さんも是非楽しんでご覧下さい。
(1)日本で「柔道」はプロスポーツ、USは「自らの心身を鍛える生涯スポーツ」
皆さんご存じの通り、日本で「柔道をやっている」方は、学校の授業かクラブで始めてと言う方がほとんどで、「大人(社会人)になってから始めた」と言う方は少ないのが現実です。
ただこちらは違います。
月・水に「アダルト基礎クラス」があり、立場のある社会人はもちろん定年でリタイヤして70歳から柔道を始める方まで通って来ます。
その根底にあるのが、
日本での柔道はつい「プロの勝負事」として見られるのに対し、USでは「心身共に自分を鍛え強くなるツール」である点です。言ってみれば「ジムに通う」「フルマラソンに挑戦する」感覚で柔道をやられているのです。
ですから私のような小娘(皆さんから見たら)の指導を、皆さん本当に真剣にでも楽しんで受けられ、1つの技ができたら心から喜ばれます。
そして皆さんの夢は「大会に出て腕試しをしたい(日本の草野球の感覚)」、「世界マスターズ選手権を目指したい(毎年行われていますが、日本の柔道家は正直少し下に見てあまり出ていません)」と壮大なモノです。
事実Tohkon Judo AcademyのオーナーDoug氏も、何十年もこのマスターズに出続けており、毎年会う世界中の仲間と生涯の友になっているのは、微笑ましくもうらやましい限りです。
日本の柔道人口は90年代の25万人から2021年には12万人に減少しています
(女子はわずか2.8万人)。「メダリストが何人」より、こんな「生涯スポーツ」としての普及を考えるのが、日本での柔道人口回復のみならず健全な子女育成に貢献するのでは?と思うのは私だけでしょうか・・・?
「年齢・性別関係なく皆生き生きしてるでしょ?
私にとって頼りになる社会の先輩であり、可愛い生徒さんです(笑)」
「世界マスターズ選手権での我が道場オーナDoug氏。(右)
彼を見ていると「年齢に限界はない」を感じさせてくれます!!」
(2)講師はプロ、有料が当たり前。でも評価が低いと次は呼ばれない!!
講師に呼ばれて1番驚いたのがこれ。
柔道クリニックでも日々の指導でも、日本ではナショナルクラスから子供の指導まで、先生は横で見ながらアドバイスするのが普通ですが、こちらでは全て一緒にやり、本当のプロの技を自ら実演しないと認められません。
ですから生涯現役、私の場合内股の足の上がり角度が下がったらお払い箱になるので、今でも必死にトレーニングし筋肉痛と戦っています。
また講師料は日本の「お足代+α」とか企業所属の「交通費+日当のみ」はあり得ません。呼ぶ側の事情次第で物価の違いもありますが、最低でも交通費・宿泊費抜きで1日$200(約3万円)、多い時は$1,000(15万円)が支払われます。もちろん受ける生徒も有料で、大体1人1日$30~$50(4,500円~7,500円)を払って参加します。
「価値のあるモノにおカネを出す」さすが多民族で資本主義の国、アメリカのルールです。
ただ評価は厳しく、例え現役時代どれだけ実績を出していてもその日の指導内容がイマイチだと次からは絶対呼ばれないので講師にとっても真剣勝負、私も今は少し慣れましたが、はじめの頃は試合前日と同じぐらい緊張して準備していました。
ただこの緊張感のある関係は、ある意味心地良い挑戦だと感じています。
「これが初めて参加した女子キャンプ。
顔は笑顔ですが、内心はドキドキの4日間でした~!!」
「宣伝ですみません。これが私の現役時代の内股。
今ここまで足を上げるのは・・・、う~んちょっと無理かな・・・」
これはロサンゼルスでやった柔道教室の案内チラシ。
プロとして扱われる分、派手に宣伝され、これを見た親が我が子に
2-3日のコースで1万円以上かけて申し込みます。
「全てがビジネス」の国、アメリカならではです。
(3)嘉納先生への尊敬はこちらの方が上(!?)底流に流れている精神は同じ!!
皆さんはご存じでしょうか?海外の柔道家にとってどれだけ日本が尊敬され、愛されているか・・・?正直私も、柔道家の日本人と言うだけで、こちらの柔道関係者から尊敬を持って見られるし、それは他のスポーツに比べすごく有利な点です。
何より柔道の基本精神である「精力善用、自他共栄」の教えを、ある意味日本より大切にしています。4~6歳のCubby(児童)クラスでも、当然練習前と練習後、正座をして嘉納先生の肖像に礼をするのはもちろん、「嘉納先生の生まれた年」や「柔道界への貢献」「柔道発展の歴史」等をクイズ形式で定期的に教え込んだりしているのです!!
(私は今でも知らないような事まで・・・)
加えて「講道館」は世界の柔道家の聖地です。日本に行く柔道家は必ず講道館に立ち寄り、嘉納先生像の前での記念撮影と、1Fでお土産に講道館グッズを買うのはお約束です。世界に普及しているスポーツでこのような競技が他にあるでしょうか?
このような根底で繋がっている柔道に対する価値観や思い。
これを世界最大の国アメリカ発で世界の子供たちに広げていくのは、本当に意義のある活動だと思っています。
そしてコロナが明けた2022年6月、この地で初めて私たちGKJNが主催する少年少女柔道大会(GKJN Cup)を開催する事になるのですが・・・、海外ではあまり例がない日本の団体が主催するスポーツイベント開催の舞台裏、それは次回じっくりご報告しますね・・・、お楽しみに~!!
「小さな子供まで嘉納先生に礼!!柔道家じゃなければ、
アメリカではちょっと普通ではない光景かも・・・。」
「こんな未来ある子供たちの笑顔を世界に広げたい!!
それにはまだまだ学ぶ事が多いのが分かってきたのが収穫です!!」
「ここが世界の柔道家の聖地、東京都文京区にある講道館。銅像はもちろん嘉納先生、その横が講道館入り口です!!」