2021年東京オリンピックが終わったその年の冬、12月14日に私は大きな大きなミッションと共にこの世に誕生する事となった。
その大きなミッションとは、後に2024年パリオリンピック57キロ級で金メダルを獲得する出口クリスタ選手(カナダ代表)の柔道着として、共に戦っていく事だ。
私たち柔道着にできる事はただ一つ、主人が100%の力を発揮できるような柔道着である事。その為私は、主人の体と要望に応えて作られた。
そして私は2022年1月14日に主人の元へ届けられた。
その時の主人の状況を説明すると、目標にしていた東京オリンピックの出場権を逃してしまい、次のパリオリンピックに向けて再起をかけようとしてる時でもあった。
そんな壮大なストーリーを一緒に歩んでいける事に喜びを感じた。
私たち柔道着もそれぞれの主人と共に戦い、苦楽を共にする事を喜びに感じている事をここで伝えておきたい。
そして主人と私は快進撃を続けた。2023年の世界選手権では2度目となる優勝を果たし世界チャンピオンとなった。私は主人にとって完璧な道着として作られたが、それを主人は勝つ事で私が主人にとって完璧な道着だと証明してくれてるようで本当に嬉しかった。
そして翌年の世界選手権で2位となりオリンピックカナダ代表が決定した。カナダの代表争いをしたクリムカイト選手は前回の東京オリンピック代表の座を奪われた因縁の相手であった。
直接対決ではない時も、2人の見えない戦いは続いていた。
しかし、私はクリムカイト選手というライバルの存在が主人を強くしていると感じていた。
人の成長にはライバルの存在が必要だと2人の戦いから教えてもらった。
2024年7月29日パリオリンピック、柔道という世界の最高峰の舞台。厳しい戦いながらも豪快な柔道で主人は見事金メダルを獲得した。これで主人の力の100%を発揮させるという役割を果たしミッションを遂行することができた。
多くの戦いをともにしてきた。
苦楽をともにしてきた。
調子のいい時も悪い時も変わらず主人は私を大切に扱ってくれた。そんな主人にこの場を借りてお礼を言いたい。
「ありがとう」
私と主人との戦いはこのような最高の結末を迎えたが、私たち柔道着の役割は主人の力を100%発揮してもらう事。
今も私と同じadidasの道着がそれぞれの主人とそれぞれのストーリーを描いている。
これからも柔道家とadidasの柔道着がともに歩んでいく未来を。
私たちは戦う全ての人を応援します。